$a$ の素因数に対する一般化SNNN数列の性質

更新日:2024/4/5

$a$ と互いに素な素数 $p$ に対する一般化SNNN数列 $S_{a,b,s}$ の振る舞いは,巡回定理によって記述される.それでは,$p$ が $a$ の素因数である場合はどうなるだろうか.ここでは,一例として $$ S_{10,-16,4}=[4,24,224,2224,\cdots] $$ なる数列(ゆゆす数列)と,$a\,(=10)$ の素因数 $p=2$ について観察しよう.この数列の全ての項が $2$ で割り切れることは明らかであるが,より詳細に「$2$ で何回割り切れるか」を考えよう.ゆゆす数列の素因数分解は $$ \begin{align*} 4 &= 2^2 \\ 24 &= 2^3 \times 3 \\ 224 &= 2^5 \times 7 \\ 2224 &= 2^4 \times 139 \\ 22224 &= 2^4 \times 3 \times 463 \\ 222224 &= 2^4 \times 17 \times 19 \times 43 \\ 2222224 &= 2^4 \times 138889 \\ \end{align*} $$ となっている.素因数 $2$ の個数は $2,3,5,4,4,4,4,\cdots$ と遷移しているが,この数列に何らかの法則性を見出せないだろうか.以下では,このことついて一般的に考察する.

記号 $\nu_m(n)$ の定義と性質

まず,次の記号を導入する.

定義 整数 $m,n$ に対し,$n$ が $m$ で割り切れる回数を $\nu_m(n)$ で表す.ただし,$\nu_m(0)=\infty$ と約束する.

$\nu_2(4)=2,$ $\nu_2(24)=3,$ $\nu_2(224)=5,$ $\nu_2(2224)=4$.

上記の定義を数式で表すと,$k$ を自然数として $$ \nu_m(n)=k \iff n=m^k \times (\text{$m$で割り切れない整数}) $$ となる.ここで「$m$ で割り切れない」という条件を取り除くと $$ \nu_m(n)\ge k \iff n=m^k \times (\text{整数}) $$ となり,$\nu_m(n)$ に関する不等式が現れる.このことを合同式を用いて表すと,次の命題を得る.

命題 整数 $m,n$ と自然数 $k$ について $$ \nu_m(n)\ge k \iff n\equiv 0\mod{m^k}. $$

SNNN数論においては,除数を素数 $p$ とした上でこの命題を用いて「$\nu_p(n)$ に関する不等式」と「mod $p^k$ の合同式」を相互に変換することが多い.さらに,除数が素数であれば明らかに次の命題が成り立つ.

命題 素数 $p$ と整数 $x,y$ について $$ \nu_p(xy) = \nu_p(x) + \nu_p(y). $$

これらのことから,$\nu_p$ は素数の累乗を法とする合同式を取り扱う上で有用である.

演習問題

$m,n$ を整数とする.このとき,次の命題の必要十分条件を合同式で表せ(複数の合同式を用いてもよい).

  • 自然数 $k$ について $\nu_m(n) = k.$
  • 整数 $k$ について $\nu_m(n)\ge k.$

$p$ で割り切れる回数の極限値

それでは,$\nu_p$ を用いて一般化SNNN数列の法 $p^k$ における振る舞いを調べよう.まずは次の補題を示す.

補題 $S_{a,b,s}$ を一般化SNNN数列,$p$ を $a$ の素因数,$k,n$ を自然数とする.このとき, $$ n\ge\frac{k}{\nu_p(a)} \implies (a-1) \cdot S_{a,b,s}(n) \equiv -b \mod{p^k}. $$

証明

$a$ の素因数が存在することから $a\neq 1$ である.よって一般化SNNN数列の一般項より $$ \begin{align*} S_{a,b,s}(n) &\equiv \frac{Da^n-b}{a-1} \quad\mod{p^k} \\ (a-1)\cdot S_{a,b,s}(n) &\equiv Da^n-b \quad\mod{p^k} \\ \end{align*} $$ である.ここで $\nu_p(a^n) = \nu_p(a) \cdot n \ge \nu_p(a) \cdot \frac{k}{\nu_p(a)} = k$ より $a^n \equiv 0\mod{p^k}$ であるから $$ (a-1)\cdot S_{a,b,s}(n) \equiv -b \quad\mod{p^k} $$ が成り立つ.$\blacksquare$

この補題は,十分大きな $n$ において,$S_{a,b,s}(n)$ を $p^k$ で割った余りがある一定値に収束することを主張する.この値が $0$ と合同であるかを調べれば,$S_{a,b,s}(n)$ が $p$ で割り切れる回数に関する情報を得られるだろう.実際,$a-1\not\equiv 0$ より,十分大きな $n$ において $$ \begin{align*} && S_{a,b,s}(n) &\equiv 0 \quad\mod{p^k} \\ &\iff& (a-1) \cdot S_{a,b,s}(n) &\equiv 0 \quad\mod{p^k} \\ &\iff& -b &\equiv 0 \quad\mod{p^k} \\ &\iff& b &\equiv 0 \quad\mod{p^k} \\ &\iff& \nu_p(b) &\ge k \\ \end{align*} $$ が成り立つ.よって,$\nu_p(b)$ が有限値であれば,十分大きな $n$ において $S_{a,b,s}(n)\equiv 0\mod{p^{\nu_p(b)}}$ かつ $S_{a,b,s}(n)\not\equiv 0\mod{p^{\nu_p(b)+1}}$ となり,$\nu_p(S_{a,b,s}(n))=\nu_p(b)$ が導かれる.また $\nu_p(b)=\infty$ であれば,どれだけ大きな $k$ に対しても余りは $0$ に収束する.したがって次の定理を得る.

定理 $S_{a,b,s}$ を一般化SNNN数列,$p$ を $a$ の素因数とする.このとき, $$ \lim_{n\to\infty}\nu_p(S_{a,b,s}(n))=\nu_p(b). $$

ゆゆす数列 $S_{10,-16,4}$ における素因数 $2$ の個数について,$\lim_{n\to\infty}\nu_2(S_{10,-16,4}(n))=\nu_2(-16)=4$.

なお,以上の議論から特に,$b\neq 0$ かつ $S_{a,b,s}(n)=0$ となる項が存在しない*ならば $\nu_p(S_{a,b,s}(n))$ が有界である(上限が存在する)ことが分かる.この事実は後に,SNNN素因数定理の証明において重要な役割を果たす.

*2024/4/5修正

著者
蝙蝠の目
蝙蝠の目